カリキュラム・ポリシー(図書館司書課程)
編成・運営方針
図書館司書は,情報を蓄積・加工・提供する機関である図書館の専門的知識を持つ職員であり『図書館法』に司書となる資格が規定されている。『図書館法』に述べられる図書館司書の基本的な素養を身につけるためには『図書館法施行規則』に定める13科目24単位以上
(2科目2単位以上の選択科目を含む)の履修が必要とされている。ただし『図書館法』および『図書館法施行規則』は日本の各種図書館のうち公共図書館のみについて定めた法律であり,大学図書館や国立国会図書館,専門図書館および文書館等の図書館類縁機関の職員(図書館職員等)については言及されていない。そのため,これら公共図書館以外の職員については『図書館法』で規定される図書館司書資格を基本とし,各種図書館に特有の知識・技能を併せ持つ図書館職員が必要とされる。また,近年の情報技術の進歩にともなってデジタルアーカイブを作成する図書館や電子書籍を導入する図書館も増加するなど,図書館員や文書館等の図書館類縁機関の職員に求められる知識・技能は多様化してきている。
このような状況を受け,同志社大学においては『図書館法施行規則』に定める13科目24単位をベースに,公共図書館以外の館種で必要とされる知識・技能や,新しく取り扱われるようになった技術などに関する授業,さらに習得に時間が必要となるレファレンスやメタデータ管理などについての演習科目を加えた16科目34単位以上(演習科目5科目12単位を含む)の履修を課している。このうち1科目2単位以上については選択科目5科目(各2単位)の中から選ぶことができる。
また,同志社大学では上記の16科目34単位以上の科目のうち,演習科目を除く全ての科目を図書館司書資格取得希望の有無を問わず全学部学生に履修可能としている。図書館の大きな役割のひとつとして利用者に対する効果的な情報提供があることを考えれば,図書館司書課程で設置している科目の内容が利用者にとっても有効であることは自然であろう。図書館司書課程では,図書館員としての立場からの授業だけではなく,図書館司書資格の取得を希望しない学生が設置科目を履修した場合にも利用者としての立場から効果的な情報探索手法を身につけることができるように配慮した構成をとっている。
知識・技能
図書館司書および図書館職員に必要な基礎的知識としては,開講科目すべてにわたる。その中で,まず図書館の機能や社会における意義や役割,図書館の歴史と現状,利用者ニーズなどについて理解を図るために「図書館情報学概論」がある。図書館においては図書館資料を選択・収集・整理して,保管・保存する(テクニカル・サービス)とともに,効果的に利用者に提供する(パブリック・サービス)ことが必要となる。
これらの全ての過程で知識・技能は必要となるが,特に前者は知識・技能を学ぶ割合が高い。図書館におけるテクニカル・サービス(間接サービス)として図書館資料を選択・収集・整理し,保管・保存する業務に関して「図書館情報資源概論」および「情報資源組織論I・Ⅱ」が設けられている。また,これらのテクニカル・サービス全般に関わる情報技術に関して「図書館情報技術論」も設置されている。その他,より高度なテクニカル・サービスに関わる選択科目として「図書・図書館史」「図書館情報資源特論」「学校図書館サービス論」も開講されている。
さらに,理論的な知識だけにとどまらず,図書館資料の整理や加工・情報発信をはじめとして図書館司書・図書館職員のテクニカル・サービス全般にわたる基礎的技能を経験するために「情報資源組織演習I・Ⅱ」も開講されている。
思考力・判断力・表現力
図書館司書および図書館職員の思考力・判断力・表現力は,知識・技能を裏付けとして養われ,図書館のすべての業務にわたって必要とされ習得すべき力である。特に利用者と接して直接的にサービスの提供を行うパブリック・サービスでは,これらの力を涵養することが重要とされる。本学ではパブリック・サービス(直接サービス)に関して,「図書館情報サービス論I・Ⅱ」および「児童サービス論」が開講されている。また,より高度なパブリック・サービスに関わる選択科目として「図書館情報学特論」「学術情報利用教育論」も開講されている。
さらに,利用者からの多様で複雑な質問に対応するレファレンスサービスをはじめとして図書館司書および図書館職員のパブリック・サービス全般にわたる思考力・判断力・表現力を実際の例をもとに経験するために「情報サービス演習I・Ⅱ」および「図書館演習」が開講されている。
主体性・多様性・協働性
図書館司書や図書館職員として主体的に行動するためには,開講科目全般にわたる知識の習得が必要である。特に図書館は教育機関であることから,学校教育につながる面と生涯教育につながる面を有しており,図書館司書・図書館職員は多様で幅広い人達と接することとなる。そのために必修科目のひとつとして「生涯学習概論」が必要になる。
このように社会全体に向かって行動する図書館にあっては,図書館外の各種機関・企業などと協調して仕事をすることが求められる。また,図書館政策や情報政策などの影響も大きく受ける。図書館政策・情報政策を学ぶとともに,図書館司書の倫理的行動規範に基づいた適切な管理・運営が行えるよう「図書館制度・経営論」がある。
前項にあげた「図書館演習」では,図書館情報学に関する研究や提言などをグループ単位で課しており,思考力・判断力・表現力を涵養するだけではなく,主体性・多様性・協働性についても得ることができる授業として設定されている。